能楽協会ニューヨーク公演に参加して

 平成16年3月16日より7日間、能楽協会としては初めてのアメリカ、ニューヨーク公演に参加させて頂きました。
 まず、到着した日の夜、この日しか時間がないという事で、狂言方の茂山千三郎氏、茂山正邦氏、茂山千作先生の奥様と御一緒に、ニューヨーク在住の方にお願いして、ブロードウェイのミュージカル“MOVING OUT”を観に行きました。技術もしっかりしており、けっこうな舞台でした。特に、男性で2人、動きもぶれず、安定した、力強い動きに惹かれました。1人は太い直線的で特に強く、又もう1人は、繊細で、遊び、そして艶のある動きでした。太い直線的な強い動きの人が私の好みと思いましたが、後でパンフレットを見ると、もう1人の方が、1番の主役でした。万人に共通する感性をみた思いです。
 そして何より感じたことは、能も、ちゃんとやれば、絶対に負けないという事でした。再確認させて頂いた思いです。
 毎日、夜の遅い公演でしたが、昼に、学校へ行った日がありました。私が、「羽衣」の能を極短くして舞わせて頂きましたが、お世話をして下さった先生もとても親切で、何よりも子供たちの目が輝いている様で、良い思い出となりました。帰る時、子供が「アリガトウ」と言っていたのが印象に残りました。
 今回の公演は、毎日、能「恋重荷」を、片山九郎右衛門団長が舞われました。出発の日、成田空港にて、飛行機に乗ったと思ったとたん、片山先生は、着ている物を全部脱ぎ、ジャージのような物に着替え、睡眠薬を飲んで、寝てしまわれました。途中、1度目を覚まされたようですが、横で、息子の清司さんが止めるのを振り切って、再び、薬と酒を飲まれ、次に目覚められた時は、ニューヨークであった様です。恐ろしい話ではありましたが、能を舞う為に、とにかく眠っておかなければ、と考えておられたと言っておられました。結局舞台で、時差などの為、皆、睡魔に襲われていた中で、1番お元気だったのが片山先生でした。薬を、それもお酒で飲む事は別にして、舞台に対する心構えを見せて頂き、勉強になったと思っております。