能について

 能は、室町時代にそれまであった、猿楽、田楽などの芸能を、集大成し、現代まで続いている舞台芸術です。特に、足利3代将軍義満などの庇護の下に、世阿弥などによって貴族的趣向に作り上げられました。又、江戸時代には、武家の式楽として続くとともに、町人の間でも、稽古事として、教養として広く愛好されました。寺子屋で教えていたのも、読み書きソロバンと、能の詞章である謡であったといいます。
 近代、現代においても、その発声法、呼吸法から、健康の為にそして一生楽しむことの可能な趣味として、そして教養として、愛好されてきました。
 能には、2つの大きな要素があります。1つは「空間の充実」であり、もう1つは、「心の成長」です。
 「空間の充実」とは舞台上の表現の技術であり、能の表現の手法です。「花」「迫力」「美しさ」「静中動あり」「動中静あり」などの言葉であらわされる事です。これは舞台の演者が、稽古によって、一生追い求めてゆきます。
 「心の成長」とは、演じる側も、観る側も、その能に触れた人が、人間の逃れることの出来ない真実を感じ、人間の心の内の、いつの時代にあっても、不変であるものについて考えさせられる事によって、物の見方、考え方を深めていくという事です。充実した空間から伝えられる事によって感動し、その感動によって心を成長させてゆくのです。
 現代社会において、いろいろな悲惨な事件がおきている中で、「心の教育」について、その重要性が説かれています。又、能はこのたび、ユネスコの「無形遺産」と宣言されました。国際的にも長い間注目されていた舞台芸術です。約650年ほどの間、一度も絶えることなく、人々の心を捉えてきた能に触れる機会を、是非とも持っていただきたいと願っています。