ヒナ達へ


 子供を育てる事は、なんとムツカシイ事なんだろう。特に我が子が一番ムツカシイ。私の正直な気持ちです。
 子供が大人になるまでを導く、第一の責任者は親であります。どの親も、子供の成長を夢見ていることでしょう。「1」の子は「2」に、「10」の子は「11」に、「50」の子は「51」にと、少しでも成長することを願います。さて、私の家は「能の家」です。3人の息子たちも、2才の頃より舞台に出演しています。誕生前は母親の胎内に向かい謡を聞かせ、生後は能の稽古はもちろん、体操、ドッツカード、フラッシュカード、知識カード、バイオリン等々に励みました。なるべく親子とも楽しく思えるように。 又、私のところに「能」の御稽古に来る子供がおります。わが子も含めて、子供の能力は、すばらしいと思いました。子供が集中した時の、記憶力、瞬発力、持続力、量り知れません。
 さてここで、最初に書きました「ムツカシイ」を、「親の思い通りにならない」と改めます。例えば、子供は何時も集中するわけではありません。一度出来たことが、次回も出来るというわけではありません。親の喜びと、子供の喜びが一致するわけではありません。そして、何時も言うことを聞くわけではありません。当然親子でも、別の人格なのです。私自身「親の思い通りにならない」と、我が親に思われたことでしょう。この当たり前のことが、親にはなかなか理解できません。ただし、言葉としては理解するのですが。しかし、子の「親の思い通りにならない」事は、子供自身に考える力、又は物を思う力があることで、喜ぶべきことでしょう。自立出来なければ困るのですから。細かい事でいちいち親の思い通りにならなくても良いのです。子供を育てる第一の責任者は親です。親もまた子供によって、大きく育てられると実感致します。
 社会において、子供を立派に育てると、その子供が将来社会を素晴らしいものにしてくれることでしょう。社会全体が幸せにならねば、個人の幸せはやってきません。「他生」の言葉の通りなのですから。
 本人、親、指導者その他多勢の人々、社会全体の努力によって、一人でも多くの子供が、社会人として立派に育ちますように願います。

平成9年5月31日 人間能力開発研究所機関紙「虹」へ寄稿